自民の苦悩…参院は衆院の“落ち穂拾い”なのか?(産経新聞)

【自民党苦悩の現場】(1)

 レスリング全日本選手権の最終日を迎えた昨年12月23日の東京・代々木第二体育館。吉田沙保里、伊調馨、浜口京子の五輪メダリストらがリング上で格闘を繰り広げる中、観客席やアリーナの役員席を懸命に歩き回る男がいた。元レスラーでチョンマゲをトレードマークとする前衆院議員、松浪健四郎(63)だった。

 「よろしく頼みます」「頼むよ」−。

 松浪はレスリング関係者らに次々に声をかけながら握手し、友人を見かけると100枚ほどの名刺を渡して「仲間に配ってね」とお願いした。相手もほとんどが「頑張ってよ」と肩を叩いて激励した。

 ■次まで待てない

 昨夏の衆院選で2度目の苦杯をなめた松浪は昨秋から、出身の日体大の同窓生らを頼りに活動を続け、講演だけでもすでに20カ所以上でこなした。

 地盤の大阪19区を離れ、東京で活動するのには理由があった。夏の参院選に比例代表の出馬を検討しているからだ。

 松浪は次の衆院選は任期満了直前までないだろうと予想する。「60歳を過ぎたのだから勝負のしどきを間違えてはいけない」。つまり「次まで待てない」ということだ。知名度の高さを武器に、選挙区にこだわるよりも全国の支持者に訴えた方が戦いやすいとの思いもある。

 かつて教鞭(きょうべん)をとった大学への復帰やタレント活動の選択肢もあるはずだが、なぜ政治家にこだわるのか。

 「政治に対する情熱と執念がある。それに対中東外交をもっとやりたい。中東問題は、おれしかできない」

 ■くら替え続出の背景

 衆院から参院へのくら替えは自民党では珍しいことではなかった。しかし、昨夏の衆院選では自民党は解散時の303議席から119議席に激減したため、くら替えを模索する元議員はかつてなく多い。

 とりわけ「参院で最後のひと花を咲かせたい」と考えるベテラン勢が少なくない。それが、比例代表の「70歳定年制」という党の内規と混然して、くら替え批判をもたらしている。

 国民新党入りを模索する元自民党副総裁、山崎拓(73)は6日、総裁の谷垣禎一に「外交安保問題、とりわけ北朝鮮問題に議員で取り組んでいきたい。ぜひチャンスを見いだせるようにご配慮願いたい」と比例代表での公認を迫った。元法相の保岡興治(70)も公認を求めている。

 次期参院選に向け、民主党による強烈な締め付けもあり、集票マシンである業界団体は次々に組織内候補擁立を見送り始めた。これは「固定票」の減少に直結するだけに、特定の後援会組織を持つ元衆院議員を比例代表で擁立することは自民党執行部にとってメリットも大きい。谷垣が党再生に向けて設けた政権構想会議が、元衆院議員を念頭に「ブロックで集票できる候補者」の擁立を比例代表候補で検討するよう勧告したのはそのためだ。

 ■反発する中堅・若手

 これに抵抗しているのが、参院を中心とした中堅・若手らだ。

 参院には元々、「参院は衆院の落ち穂拾いではない」との思いがあるが、理由はそれだけでない。

 批判の急先鋒である参院議員、山本一太(51)は自らのブログで「『離党』によって生じるマイナスの影響より、比例で公認したときの負のインパクトのほうが大きい。というより、無党派対策に『壊滅的な打撃』を与える可能性すらある」と断じる。

 その一方で、大量落選した「小泉チルドレン」の中にも比例代表での公認を目指して執行部に直訴する者が後を絶たない。ある党幹部は「支持団体をつけてほしいとおねだりしたり、『私は30万票を集めてみせます』と見栄を切ったり…。勘違いしている人間があまりに多い」と嘆く。

 結局、執行部は山崎、保岡の公認を見送る方針を固めた。それでも、参院では、衆院からの大量のくら替えをなお警戒する。

 ある閣僚経験者は、山本らの主張にある程度の理解を示しつつも「問題は集票を期待できる若手をどれだけそろえられるかなんだ」と打ち明ける。

 それでも松浪は「言うのは自由だが、自民党には定年制はあってもくら替え禁止のルールはない」となお強気だ。今年の手帳には、すでに全国各地の予定がぎっちり記されている。全国行脚の「実績」を引っさげて、自民党に公認申請する考えだという。

 昨年暮れ、松浪は大阪市内の会合でばったり出会った参院幹事長の谷川秀善に「くら替えは厳しいぞ」とささやかれ、嫌みを込めて言い放った。

 「それだったら他党に行きますよ!」

     ◇

 昨夏の衆院選で惨敗した自民党にとって、今夏の参院選に党の命運がかかっているといっても過言ではないが、障害や対立が絶えない。関係者が抱える苦悩ぶりに焦点を当て、随時掲載していく。

=敬称略

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